街並みや夜景、山の木々が見える場所に住みたい。高台に登ればロケーションがよくなるのは必然です。しかし良い土地を見つけることと、良い家を建てることはまた別の話。例えば、景色がよい場所にカーテンウォール=大きな窓を配置する。が、実際にそのまま設計すると、外から丸見えになってしまう。肝心なのは、どんな暮らしの中でどんな風景を見たいかを具体的に想像すること。この住まいでは、ダイニングに座ったときに見える街並み、そしてソファに座ったときに見える四季で変化する山の美しい風景を「主役」と設定。そこから逆算し、ちょうどいい窓の大きさや、下を歩く人からは家の内部が見えないよう窓の高さを決めることに成功しました。家を建ててみるとそれはあたりまえのように体感できますが、企画設計の段階でシミュレーションすることは意外と簡単なことではありません。同じ高さの脚立に登って撮影したり、角度を計 算しイラストイメージやミニチュアでオーナーと丁寧に合意形成する時間を設けたりもしました。